おいしいごはんをありがとう
私の母親は、料理が下手な女だった。
母が出すご飯はコンビニで買ったものがほとんどだったけど、たまには手料理を振る舞ってくれることもあって、ただしもれなくどれもマズかった。
記憶に残っているマズかった料理堂々の第一位は「玉ねぎ」だ。
皮をむいた玉ねぎを丸ごとレンジに放り込み、なけなしの醤油をかけた逸品。中まで熱が通っておらずクソ辛い。
ちなみに第二位は「林檎マヨ醤油」だ。
切った林檎とマヨネーズ、醤油を一つの器に入れ、なぜかその後レンジでチンする。林檎そのままで食べたほうが絶対うまい。
おまけの三位を特別に教えると、第三位は「詐欺酢豚」である。
我が家では、肉なし野菜炒めにケチャップをぶっかけた代物を「酢豚」と呼んでいた。酢豚とはそういう食べ物だと信じ切っていたので、その後施設に送られて本物の酢豚を食べたとき「こんなの酢豚じゃない!」と言ってひんしゅくを買った。
こう書くと、私のことを「不味い物だけで育った可哀想な人」と思うかもしれないが、実はそうでもない。
私の母親は、料理上手な男を捕まえる天才だった。