いつまでもあると思うな親と金、あと健康。

足の爪が剥がれた。

 

数日前に「小さい頃、転んだだけで爪ごと飛んで行った~」というエピソードを披露したばかりだが、大人になってからもゴリゴリ剥がれた。32歳児まじかよ。

 

何で剥がれたかってそんなもん、つまずいたからである。しかも何もない場所で。

 

ラブホバイト中、コケっとつまずいたら見たことない位置に爪がいて、ほんの数ミリのところで引っ付いてぷらんぷらんしていた。(良からぬ体液をよく踏んづけるので、多くのラブホバイターは勤務中裸足)

 

は?そんなんで爪剥がれんの?意味わかんねぇと思いましたか?そんなもん私が誰よりも思ってるよ意味わかんねぇ!

 

自分の足を見つめたまま固まる私を不審に思ったスタッフが、私の足元を見やって悲鳴を上げる。その悲鳴を聞いて続々と他のスタッフも集まってきた。

 

とりあえず消毒して!先に止血だろ!社員さんに連絡して病院に!え、これって何科!?

 

私の周囲が途端ににぎやかになる。いつも人の陰に隠れてこっそり仕事をしているので、皆から注目されるとどうすればいいのかわからない。

 

とりあえず促されるまま、マキロンを爪が生えていたであろう箇所にぶっかけてみた。

 

(゚∀゚)(゚∀゚)(゚∀゚)!!!

 

本気でこんな顔になった。あまりの痛さに表情筋がバグって笑顔だ。一瞬視界が白く瞬いたぞ。あれが昇天か。

 

そして私が常世から現世に舞い戻ると「どぶのさんはこれから病院に行く」ということで話はまとまっていた。いつの間に。

 

しかし社員さんも「これまで爪が剥がれた清掃員は一人もいない」と終始テンパっており、連れてきてくれた病院はまさかの美容皮膚科。

 

患者さんは女性ばかり、先生や看護師さんも美人揃い、オマケに何をどうしたらそんな金額になるのか一回の会計で万単位のお支払いをしていくオサレ番長の患者もいる。

 

そんな中ラブホバイトの制服のまま痛みにプルプル震えている私は、完全に場違いだった。

 

それでも病院側は「美容皮膚科にうっかり紛れ込んだ一般患者」として適切に処置してくれたのだが、診察で何故爪が剥がれるに至ったのかについて聞かれる。

 

「バイトで掃除してて」と答える私。

 

「どこで何の掃除してるの?」と言及する先生。

 

何と答えて良いかわからなかったので正直に「近くのラブホです。この道の2つ先にあるやつ」と私が答えると、先生は「あー、あそこね!あのSMチックの椅子とかにぶつけると確かに剥がれるかもね!」と言った。

え、先生客として来たことあるの?SMチックの椅子使ったの?でもSMチックの椅子にぶつけたんじゃないんですよ、自ら何もない場所でつまずいたんですよ…。とは言えなかった。

 

塗り薬や痛み止め、化膿止めなどの処方箋を出されて診察は終了。

 

今度は近くの薬局へ行き薬を貰うことになったのだが、そこでも症状について聞かれる。

 

「足の爪が取れました」と答える私。

 

「あちゃ~。いつのケガですか?既に化膿していますか?」と問う薬剤師さん。

 

「いいえ、取れたてなのでまだ化膿も何も…」と私が答えると「取れたて!取れたてというと野菜のようですね!」と薬剤師さんはとてもウケていた。何わろてんねん、取れたてやから痛みもフレッシュなんやぞ。とは言わなかった。

 

爪は根元付近までごっそり剥がれたので、最低でも元に戻るまで半年くらいはかかるという。