コンパで私と出会ったら、ババを引いたと思って諦めてほしい

いつも以上に人が繰り出し、賑わう街の姿に年の瀬を感じながら2019年最後のコンパとやらに参加した。


今夜の登場人物は
よしこ(♀/私の友人)
堀田(♂/よしこの友人)
中田(♂/堀田の友人)
そして私、の4名である。



まず、私は知っていた。

よしこは堀田のことが好きだということ。
むしろ今日はコンパとは名ばかりの、よしこによる堀田捕獲作戦ということ。


コンパもよしこの恋愛事情にもさほど興味はないし、私自身コンパは嫌いなタイプだが、暇な私は何か面白いことでも起こらねえかという悪どい気持ちだけで参加していた。

こんなハンパな気持ちで参加して、私の相手役の中田には申し訳ないが、2019年最後の厄だと思ってなんとか耐え忍んでいただきたい。



よしこが好きな男がどんなだろう、と会ったことがない堀田にふと思いを馳せる。

よしこはスポーツマンタイプの男が好きだからマッチョなのだろうかとか、髪は短髪かなとか、やっぱり友人としては、堀田はしっかりした好青年みたいなのがいいなあとか、勝手なことを妄想した。


実際に会った堀田は、普通の人であった。
別にマッチョじゃないし、髪はどちらかというと長めだし。

ただ優しそうで人の話をきちんと聞く、いい男かどうかはまだ判断できかねるが、悪い男ではなさそうだ。



そして、おっちょこちょいな男だということも分かった。



堀田は会った瞬間からズボンのチャックが、社会の窓が、清々しいほどにフルオーオプンだったのだ。



私は堀田の人柄よりも先に、堀田のパンツの柄を知った。スヌーピー、好きなんだ?


年末というタイミングのせいでどこの店も混んでいて、テーブル席をあきらめカウンター席に座ったのも悪かった。

よしこ・堀田・私・中田の順で横並びに座ったものだから、ただ俯くだけでスヌーピーと目が合う。堀田よ、どうか足を組まないでくれ。


ねー、よしこー。見てー。堀田のパンツ、スヌーピー

よしこに必死の目配せを送るものの、堀田という獲物を前にして、狩りモードに入ったよしこは私なんかには気づかない。これだから女の友情は。




狩りモードのよしこと、スヌーピーパンツをはいた堀田にすっかり気を取られていて忘れていたが、私の相手は中田であった。


中田は、ダメな男であった。
いや、中田がダメだったわけじゃない。

中田は、私の苦手なタイプだった。


俗にいうクラスの人気者タイプの中田は、顔もそれなり、気が利いて、おしゃべり上手。
着るものにもこだわりを感じたし、女の子のネイルとかにも気づけるタイプ。たぶん。


こういう人をパリピと言うのかなと考えてふと、普段暗く生きてるせいで馴染みのないパリピという単語が面白く感じられた。なんていうか、語呂が独特。

頭の中で何度もパリピという単語を転がして遊びながら、ぼんやりと中田の話を聞いた。



中田の話はオナニーのようだった。
3分の2くらい、自虐ネタ。


これは私の持論だが、自虐ネタを展開しまくる人は自己愛が強いと思う。

あえて自分を落とせる俺、最高。
中田はそんな自分で自分を気持ちよくする会話が得意な男だと思った。


それにしても中田の自虐ネタには、年季を感じた。
慣れた口ぶりで自虐ネタを連発してくる中田がひどく鼻につく。


私は中田の自虐に乗っかって、突っ込むべきだろう。そしてそのあと、「もー、中田君て面白い」とかなんとか言って声を上げて笑う。

中田はオナニー補助を待っている気がした。



が、とりあえずそっと堀田のスヌーピーを盗み見る。よしよし、ちゃんといる。ほんの少し開いた隙間からちゃんとこちらを見守っている。



狩りモードに突入しているよしこと
ズボンのチャック全開の堀田と
自虐オナニー会話を繰り広げる中田と
人の粗ばかり探す私。


登場人物全員くだらなくて、おもしろくなってきた。
ああ、今日のコンパは大外れの大当たり。


帰る間際、トイレに立ち帰ってきた堀田のズボンのチャックがきちんと閉められていて、少し残念な気持ちになったけれど。



中田のオナニーは結局手伝わなかった。
GOODオナニー補助賞とかもらって気に入られても困るので、とにかく終始ふわっと接し続けて連絡先交換もしなかった。




そんなこんなで終わった2019年。
そんなこんななまま迎えた2020年。

よしこから「あけましておめでとう!堀田と付き合えました!」と捕獲成功LINEが入ってた。


1日放置して「おめでと」とだけ返しておいた。便利な言葉である。