キム・タクの子守歌

「ねえ、これタクヤタクヤ。ほら、あのキムタク。」

と言って見せられた写真には、デカい犬に囲まれたおっさんが写っていた。

確かに某アイドル事務所のキムタクはおっさんだけれど、写真の中のおっさんは、キムタクのような小綺麗にしているおっさんではなく、あくまでただの、本当にそこら辺にいるちょっと小汚いおっさん。というか、写真を見せてきた張本人のおっさんそのものだった。


電車内でキムタクを名乗る見知らぬおっさんに声をかけられた私は、どうしていいのかわからず咄嗟に

「あ、あー…キム・タク~。」

と返した。

天下のキムタクを、まるで二流韓流スターのように扱ってしまった。




私は、この手の人種によく遭遇する。
皆一様に唐突に絡んできては、超展開の話を披露し、気が済むと勝手に去っていく。

人間は生きていれば定期的にこういう人種に出会うものなんだろうと思っていたが、他の人に言わせるとどうやらそんなことはないらしい。


「君ってからあげくんに似てるね!ところで最近地震が多いのは悪魔のせいだって知ってた?」と知らない人に突然話しかけられたりしないし「ビッガヂュウウウウウウ!!!!」と知らない人から突然10万ボルトを食らったりもしないし、見知らぬホームレスから声を掛けられ梅の花の知識を授けられたりなんてこともないという。



変な奴には変な奴が寄ってくる。これが類友というやつなのかもしれない。